土の章 熊に学ぶ





  7 虚実について  

 
 太極拳の姿勢の注意点の一つに「上虚下実」があります。また、「外柔内剛」ともいいます。

 「上虚下実」とは上体が軽く、下半身がしっかりして重いという意味です。また、「気」が頭部よりも腹部のほうに降りている状態をいいます。

 一般には、頭は重いのです。つまり上実下虚(じょうじつかきょ)です。頭部には目があり、耳があり、鼻があり、口があり、触覚をいれて五感のすべてが集結しています。おまけに、極限まで進化したコンピューターのような大脳が内蔵されています。

 つまり、頭部にはさまざまな高度なはたらきが集結しており、パソコンが電力を必要とするように、「気」のエネルギーを必要とするのです。頭部には必要以上の気が集まってきます。そして頭部の「気」は消費されるしかありません。

 しかし、その状態が持続すると、かならず、内臓のはたらきに異常が出ます。 それに対して、昔の教えでは、「気沈丹田(きちんたんでん)」が強調されます。

 目を半眼にして、頭のはたらきをスローダウンさせ、静かな呼吸によって、「気」を腹部に沈めます。腹部には丹田という「気」をチャージする場所があります。一般に現代人はこの腹部の丹田が未発達なのです。

 精神的に不安定になった人は食べることによって尖った神経を休めることができます。なぜなら、考えすぎて頭に集まった「気」が、食べ物を胃に入れるとその消化のために腹部に下がってくるからです。しかしそんな方法を常時行えば、肥満(メタボ)の原因になるでしょう。

 「熊のエクサイズ」を練習すれば、「気」は自然に腹部に下がってきます。胃潰瘍の人にとってはそれが治療法にもなります。

 
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